プロローグ

第一話




シナセラ歴 3213年


「おい、シオン!来てやったぜ、早くしろよ!」

「あぁ。今行くよ」

シオンは、ベッドから上半身を起こし、まだ少し残っている眠気を振り払う。

ゆるりと髪を掻き上げながら、窓の外、親友のグレン・サドラスに言った。

今日は、久しぶりに二人で森に狩りに行く約束をしていた。

ベッドから下り、ふと、ベッドの脇に立てかけてあるシオン愛用の剣を手に取った。

(ディーゼルが来て、今日でちょうど1年、か…)

シオンは、1年前にあった出来事を思い出し、ふっと笑みを漏らした。

「おい、シオン!いい加減にしろよ!」

ただでさえ気の短いグレンは、なかなか出てこないシオンに、怒り混じりの声で怒鳴った。

「あっ、ごめん!すぐ行くよ!」

グレンの声に、はっと我に返ったシオンは急いで着替えをすませた。




ガチャ


ドアを開け部屋を出ると、そこにはディーゼルが座っていた。

ディーゼルは、シオンの方を向き、睨みながら(彼女には睨んでいるという自覚はないが)、

「シオン、早く行け。グレンあいつ がうるさい」

顎で、外に立っているグレンを指しながら、彼女は溜息混じりに言った。

「はは…。すぐ行くよ」

シオンは、何と言っていいか分からず、とりあえず笑ってごまかした。

「シオン」

「え?」

ドアに手を掛けていたシオンは、ディーゼルに呼び止められ(早く行け、と言っていたのは

どこの誰だ?)、振り向いた。

嫌な予感…。

「朝食はいらないのか?」

見ると、彼女はテーブルに置かれているサラダと目玉焼き(と思われる物。焦げていて分からない)の

載っている皿を少し持ち上げてこちらを見ていた。

「え?あ、うん…いいよ。森で何か捕って食べるよ」

(ディーゼルの作ったものなんか食べたら、腹壊しちゃうもんなぁ…)

申し訳ないと思いつつも、シオンは少し引き攣った顔で、曖昧に笑顔を作り返事をした。

シオンは、ディーゼルの料理音痴を知っていたのだ。

「…人がせっかく作ってやったというのに…」

ディーゼルが眉間に皺を寄せて言ったが、シオンは聞こえないふりをして、

「い、行ってきます!」

という言葉を残し、家を後にした。







「で?今日はどこに行くんだ?」

村の入り口で、シオンは入り口の前を流れる小川に架かる小さな橋に体を預け、グレンに訊いた。

「そうだなぁ…。そうだ!」

グレンは、少し考えてから、ぱっと顔を上げた。




「サキエスの森に行こう」

「!OK」

シオンはニッと笑み、グレンに親指を立てて、了解の意を示した。




『サキエスの森』―


それは、シオン達の村から少し行った所にある森のことだ。

その森で、シオンとグレンは3年前、フィーナ(彼女の生まれ変わりが、現在のディーゼルなのだ)と

出会った。

シオンは、フィーナに無理矢理『闇の魔石ダークマジックストーンを壊す者』に任命され、闇の敵、

『ダークヴォルマ』と戦ったのだった。

だが、その戦いによって”フィーナ”は消滅してしまったのだった。

シオンや、テスタルトを守るために…。



その戦いの1年後、再び神の【夢見】によって、シオンはグレンと共に、再びラクシアスランドへと

旅立ち、ディーゼルと出会ったのだった。







シオンとグレンは、早速サキエスの森へと向かった。









08.11.29 一部加筆・修正


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