エピローグ 〜転生〜
第四話
トールト村・シオン宅
ドンドンドンッ!!!
「ん?なんだぁ〜?」
シオンは遅い朝食を口にしながら、慌ただしい玄関へと向かった。
ドンドンドンッ!!!
尚も激しく叩かれるドア。
シオンは、このドアが可愛そうになってきた。
「はいはいはい…」
「シオン早くしろ。うるさい!」
ディーゼルに言われ、シオンはその足を速めた。
ガチャッ
「シッシッ…シオンっ!!!」
「どぅおわっ!?」
ドアを開けた途端、勢いよく飛び込んで来たのは、シオンの親友、グレン・サドラス。
「お、落ち着け、グレン!」
グレンの様子に若干焦りながら、彼をなだめる。
が、しかしグレンは、
「お、落ち着ける場合じゃ………ねぇ!!」
文法がおかしかった。ちゃんとした言葉になっていない。
「…一体どうしたんだよ…?」
シオンは小さく溜息をついた。
とりあえず、彼の話を聞こう。話はそれからだ。
「き、聞いて驚け!俺、今スゲーもん見たんだよ!!」
「?」
「な、なんと…」
「おい、グレン」
どうやらリビングにいたディーゼルにまで、興奮したグレンの声は届いていたらしい。
ディーゼルが、これでもかと言うくらいに深い皺を眉間に刻みやって来た。
目を見開き、手振り身振りで今まさに言葉を発しようとしていたグレンは、その口を閉じた。
「もっと静かに喋れ。…殺されたくなければ、な」
「ははは…」
そんな2人を見て、シオンはただ苦笑するだけだった。
(…やっぱり、人間になっても性格はドラゴン…フィーナのままだなぁ…)
「続きを、グレン」
ディーゼルの気迫に負け固まっているグレンに、促す。
「あ、ああ」
グレンはディーゼルのさっきの言葉がきいたのか、さっきよりはだいぶ落ち着いて静かになった。
「俺…今さ、湖に行ってきたんだけど…そこでよ、何を見たと思う?」
グレンがお開けでも見たような顔つきになった。
シオンはグレンのそんな顔に、ごくりと唾を飲み込む。
「な、何…?」
と、恐る恐る尋ねる。
「白い………ペガサスが…いたんだよ…!!!」
「!?」
シオンとディーゼルが、グレンの言葉にバッと顔を見合わせた。
(…まさか!?)
だが、ディーゼルは…、
「…いや、そんなはずはない。…やつは…死んだんだ…」
「でも…」
コンコンコン
「?」
再び、玄関のドアがノックされる。
今日は来客が多い。
(…なんか…嫌な予感…)
そんなシオンの勘は見事に的中した。
ガチャ
「久しぶりじゃの!シオン、ディーゼル!」
ドアを開けると、そこには眩しいエメラルドグリーン。
リースナージョペガサスは、満面の笑顔を浮かべ、うるさいほどに言った。
「……黙れ。馬刺しにされたいか?」
ディーゼルが呆れ果てた顔で、誰が見ても不機嫌と分かる顔で言った。
だが、これも彼女なりの挨拶…か?
「ふふ…相変わらずじゃのぉ、ディーゼル。それが久しぶりの友への言葉か?」
「一体、誰が、いつ、貴様の事を友だと言った?」
「まぁまぁ…。とにかく、リース、入れよ」
シオンが慣れたように2人を制し、リースを部屋に招き入れた。
また一段と騒がしくなりそうだ。
そして、そんな3人のやりとりを、口をぽか〜んと開けて眺めるのが1人。
もちろん、この状況についていけないグレンだった。
「…シオン…。一体…今度はなんなんだ…?」
「…今から説明してやるよ。…ちょっと長くなるけど…」
4人がリビングのテーブルにつく。
窓から入ってきた光が、リースのペンダントに反射してきらりと、光った。
09.03.21 一部修正
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