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第二章~マントと木刀~
第七話
次の日の朝だった。
いつもシオンより早く起きるジーナの姿が、リビングになかった。
シオンが、ジーナの寝ている部屋に行くと、ジーナはまだ眠っていた。
いや、眠っているように見えた。
「…母さん?」
シオンはジーナの枕元に寄り、顔を覗き込んだ。
「母さん?母さっ…!」
ジーナの頬に触れたシオンは、そのあまりの冷たさに、後ずさりした。
ジーナは、眠っているように、死んでいた。
だが、ジーナの顔は、とても幸せそうだった。
「あ…あ…」
シオンは、さらに後ずさりをした。
壁にぶつかって、その場にずるずると座り込んだ。
「母さ…」
シオンの目から、みるみる涙が溢れた。
首を左右に振る。
嘘だ、と否定するように…。
「う…わ…っ母さ―――んっ……!!!」
村中に響き渡るような声で叫んだ。
周りの景色が消えていく…
目の前が真っ黒になった…
気がついた時には、ベッドの上にいた。
(ここは…?)
しばらくして、シオンは周囲を見回し、そこが
シオン
(
じぶん
)
の部屋だということが分かった。
「…気がついたか」
声のする方へ首を回すと、ベッドの横にはマーシュが座っていた。
「あ…マーシュ…。か、母さんが…」
「…知っている」
「え?」
マーシュの言葉が、一瞬理解できなかった。
「…すまない、シオン。俺は、もうだいぶ前から、ジーナの先が長くないことを知っていたんだ…」
「………」
シオンは、何かを言いたかったが、言葉が出てこなかった。
しばらくは、頭の中が混乱して、何も考えられない状態だった。
その日の午後、ジーナの葬儀が行われた。
シオンは、もう泣かなかった。
「偉いぞ、シオン…」
マーシュは、そっとシオンの頭を撫でた。
その時、シオンの目からは、涙が一筋流れていた…。
「ねぇ、マーシュ」
「なんだ?」
「僕、これからどうするの?」
08.12.07 一部加筆・修正
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