第三章〜グレンとの出会い〜

第四話




どれくらいそうしていただろう。

突然、グレンが顔をゆがめ笑い出した。

「ぷっ…くっくっくっ…」

「?」

(な、なんだ、こいつ!?いきなり笑い出した!)

突然の事に、シオンは慌て後ずさりをした。

そして、構え直す。

「…おいおい。もういいよ」

グレンは笑いすぎて出た涙を、人差し指で掬いながら、シオンの方を見て言った。

「…へ?」

シオンの口からは、思わず気の抜けた声が出た。

開いた口が塞がらなかった。

呆然としている。

「もう…いい、って…?」

シオンはやっとのことで声を絞り出した。

「そのまんまだよ。おンまえ、面白ぇやつだな」

「………」

何という返事をして良いのかわからなかった。

とりあえず、

「ああ…」

と返事をし、引き攣った笑いを見せた。

(お、面白い!?こいつ、何言ってんだ!?)

シオンは心の中でかなり焦っていた。

頭が混乱しそうになる。

何が何だかもう訳が分からない。

グレンは、とんだ気分屋なのか?

シオンが一人であたふたしていると、グレンがシオンに向かって近づいてきた。

(な、なんだ!?)

シオンが更にあたふたしていると、グレンはシオンの前で止まり、

いきなりシオンの肩をバシバシ叩いてきた。

「はは。さっきは悪かったな!」

どうやら、シオンの格好を馬鹿にしたことを言っているようだ。

(い、いってぇ〜…!)

シオンは顔をしかめた。

「ん?」

シオンの表情に気付いたグレンは、顔をゆがめた。

人を小馬鹿にしたような顔だ。

「おまえ、もしかして痛いの?」

シオンはぎくりと肩を震わせた。

「図星だな」

シオンは、慌てて撤回しようとした。

「ちっ、違うよ!ぜ、全然痛くなんかないよ!」

言葉とは裏腹に、背中の痛みにシオンは心の中でひーひー泣いていた。

(グレンてば、力強すぎ…!)

「…まぁいいさ」

グレンはあまり深く追及しようとはしなかった。

だが、シオンにはそれがありがたかった。

これ以上詰め寄られると、そのうち絶対にボロが出てしまう。

「ほらよ」

グレンが右手を差し出してきた。

「へ?」

シオンが、訳が分からないというような顔つきになった。

「仲直り、だ。…握手だよ、あ・く・しゅ!」

グレンは、シオンに早くしろよ!というように、更に右手をずいっと差し出した。

「あ、うん!」

シオンは慌てて右手を差し出し、グレンの手を握り返した。

「…へへ」

シオンは、なんだかくすぐったい気分になった。









09.01.07 一部加筆・修正


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