第四章〜星の石と2人の友情〜

第一話




「ここだ、ここ」

グレンは、お目当てのものを見つけて、満足そうに笑んだ。

「っだっ…はぁ〜!やっ…と…つ、着いた…」

グレンの後に続いてきたシオンは、かなり息が上がっていた。

グレンの方はというと、

「おいおい、な〜にもう疲れ切ってんだよ、シオン?」

全くいつも通りだった。

どうやら、シオンとは基礎体力からして違うようだ。

一体、今までどんな生活を営んできたのだろうか…?

恐るべし5歳児。



「おい、シオン」

グレンは急かすような口調で言った。

「え?」

全く力のない返事だった。シオンはまだ少し息が荒い。

これから先、大丈夫なのだろうか?

グレンは、少し心配になってきた。

ふぅ、と溜息を一つ吐き、

「休んでるヒマなんかないぜ。早速入るぞ」

親指を立て、自らの背後にある洞窟の入り口を指した。

「う…うぃ〜」

気の抜けるような返事をし、どっこいしょと言わんばかりに(既に精神的には村長のようだ)、

シオンは重い腰を上げてグレンの後に続いた。

足取りは少しばかり重そうだが、顔と心はウキウキとワクワクでいっぱいだ。







「うはぁ〜…真っ暗だなぁ…」

洞窟に一歩入るなり、シオンは感嘆の声を上げた。

「そりゃあな」

グレンは当たり前のように返す。

だが、グレンの顔にもシオン同様、期待に満ちた笑みが広がっていた。

「そういえばさ、グレン」

シオンは何か思い出したようにグレンに問いかけた。

「あ?何だ?」

自分の身長の3倍はあろうかと言うほどの高い洞窟の天井を見上げたまま、シオンに返事を返した。

「どうしてグレンは、この洞窟に入ろうと思ったの?」

ここに来る前から、少し疑問に思っていたことだった。

なぜグレンは、急に洞窟に冒険しに行こうと言い出したのか…?

「ああ。…そのことか。前に、母さんのお使いで買い物に行ったとき、マーシュの店で誰かが

話してるのを聞いたんだ」

トールト村の住民は、それほど多くはないが、グレンはまだ全員の名前を覚えていなかった。

「なんて言ってたの?」

シオンもグレンの真似をして、高い天井を見上げて言った。

(あ、コウモリ)

「『サキエスの森』ン中にある、入り口が小さい洞窟―つまり、今俺達がいる、ここだ―の中に、

星の形をした石がある。その石を手に入れる事が出来たら、何でも一つ願い事を叶えてくれる、

ってな」

グレンは人差し指を立てて上下に振り、『教授』のような素振りをしながらシオンに説明した。

「ふ〜ん…。でもさ、それって本当の話なの?」

「おい、シオン。俺を疑ってんのか?俺の情報を舐めるなよ。

…まぁとにかく、だ。俺達は、それを確かめるためにここに来たんだ。わかったか?」

「ふ〜ん…」

なんだかまだ半信半疑、といった様子で、シオンは納得したようにコクンと頷いた。







シオンとグレンは、またしばらく歩いた。

「ねぇ、グレン」

シオンが口を開いた。

洞窟内は薄暗く、お互いの顔をはっきり確認することは出来ない。

「ん?」

「もしグレンなら、何をお願いする?その…もし、その『石』が手に入ったとして」

シオンは、唐突にグレンに質問した。

いきなりのことに、グレンは少し戸惑った。

「そうだなぁ…」

少し考え込むグレン。

「剣」

「けん?」

「ああ。剣が欲しい」

「………」

シオンは、なぜグレンが剣を欲しがるのか、いまいちよく分からない様子のようだ。

グレンは更に続ける。

「それも、普通の剣じゃなくて、大剣」

グレンはシオンを無視し、夢中になって話し始めた。

「だいけん…」

「そうさ。シオンは、剣が欲しくないのか?」

「う〜ん…」

(そんなこと、考えたことない…)

「っか〜…。シオン、お前も男だろ?男なら、剣の1本や2本、欲しがれよな〜!」

「…うん」

シオンは曖昧な返事をした。

俺にも剣は必要になるのかな?と考えた。

「それで?お前の方は何をお願いするんだよ?」

「え?ぼ…俺は、グレンとず〜っと、友達でいられますように、って!」

シオンはグレンの方を見て、ニカッと笑った。

グレンの顔が少し紅潮しているのが見えた。

(グレンでも、照れることあるんだ)

「ん?おいシオン。何ニヤニヤしてんだよ」

「べっつにぃ〜?でも、本当に、グレンとず〜っと友達でいるよ、俺!」

「良いこと言ってくれんじゃんか!」

グレンはシオンの背中を、バシンと叩いた。

もうだいぶ慣れたので、あまり痛くはなかった。

「よーっし!どんどん行こうぜ!」

グレンは気合いを入れ直し、シオンの腕を引っ張った。

「うん!」

シオンとグレンは、右腕を思いきり上に突き上げた。









09.01.08 一部加筆・修正


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