第五章〜冒険の始まり〜
第一話
シナセラ歴3210年
誰もいない、真っ暗な場所。
そんな時、空から現れた一人の少女。
ダークグリーンの長い髪の毛。不思議な形の耳に、額の真紅の宝石。そして――
腕にドラゴンの紋…。
「また夢見か…」
シオンはぽつりと呟いた。
(いい加減飽きるんだけどな)
ふぅ…と軽い溜息を吐く。
予知夢とも言うべき、シオンの特技である夢見。
ここ何年かは、同じ夢が続いていた。
シオンには、これが一体何を意味しているのかさっぱりだった。
だが、今日はいつにも増して鮮明だった気がする。
「おい、シオン。まだ寝てんのか?」
シオンの家の前で威勢のいい声がする。
慌ててシオンも身を起こした。
「やべっ!今日、グレンと狩りに行く約束だった!」
シオンは急いで着替えを済ませ、側にあった愛用のマントと剣に手を伸ばす。
10歳の誕生日にマーシュがヴィルから預かっていたその剣は、今ではシオンの愛剣となっている。
剣を片手に、シオンはふっと微笑み、グレンの元へと飛び出て行った。
グレンとは、あれから毎日一緒だ。
時にはケンカもするが、それでも二人の絆は変わらない。
グレンは相変わらず目つきは悪いが、それでもシオンは、彼が本当は根が良いやつだと知っている。
洞窟でのことは、今でも2人だけの秘密だ。
「おはよ、グレン」
外に出ると、気持ちの良い天気だった。
真っ青な空は高く澄んでいて、さわさわと流れる風は優しく頬を撫でる。
「まったく、お前はいつになってもかわらねーな。また予知夢でも見てたんだろ?」
苦笑しながらグレンはシオンの頭を突付いた。
予知夢を見始めた頃から、シオンはグレンに夢のことを話していた。
だがグレンにも、一体あの夢が何を意味するのかは分からなかった。
「さぁ、行くぞ」
狩りしに行くことは小さい頃からだから慣れてるし、この辺は対して凶暴なモンスターも居ないので、
いつものように二人は森へと入っていった。
09.01.13 一部加筆・修正
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