第一章 誕生〜出会い〜
第二話
―次の日―
「よ〜し!それじゃ行くわよ!フィーナ!アルミオン!ラフィス!」
「………」
「はーい」
「………」
満面の笑みを浮かべて3人を振り返るフェーンフィート。
だが、彼女の声に返事をしたのはアルミオンだけだった。
フィーナとラフィスは相変わらず無表情だ。
「それじゃ、しゅっぱぁーっつ!」
まるで小さな子供が遠足に行くときのように、フェーンフィートは浮かれはしゃいでいた。
その足取りは他の誰よりも軽い。
サクッ サクッ…
ザッ ザッ…
砂利と草を踏み分け、フェーンフィート一行は神様の神殿へと進んでいく。
「…フェーンフィートさん」
出発して少し経った頃、フィーナが今日初めて口を開いた。
「ん?何、フィーナ?」
フェーンフィートは少し首を後ろに向け、フィーナの方をちらりと見た。
フィーナは顔を上げずに、歩きながらフェーンフィートに尋ねた。
「どうして私達は…その、ペガサスの子とやらを見に行くんですか?」
フェーンフィートは、フィーナの質問に少し驚いたが、すぐに笑顔で答えた。
「そんなのカンタンよ〜♪」
人差し指を上下に揺らしながら、フェーンフィートは言った。
フィーナは、え?とふいを突かれたように顔を上げる。
「気になるじゃない♪可愛い子かどうか!」
フィーナは、聞くんじゃなかったとボソリと言った。
それを聞いていたアルミオンは、くすりと笑った。
「…何がおかしい、アルミオン」
少し怒りモードのフィーナが、ぎろりと軽くアルミオンを睨んだ。
「別に〜?」
しまった、というように、アルミオンは頭の後で手を組み、そっぽを向いて答えた。
「フェーンフィート、前を向け。もうすぐ着くぞ」
ラフィスに言われ、フェーンフィートはくるりと前を向いた。
「はぁ〜楽しみ〜♪」
フェーンフィートが興奮を抑え、体の前で拳を握り締めながら言った。
「楽しみだね、フィーナ♪」
「………」
フィーナの反応をわかっていて、アルミオンは敢えて笑顔で言った。
彼の予想通り、サラリと交わされた。
(まったく、フィーナは素直じゃないんだから…)
少し肩をすくめながら、今度はフィーナにばれないようにアルミオンは笑んだ。
「神様、フェーンフィート一行、到着致しました」
―お入りなさい―
フェーンフィート一行は、神殿の重い扉を押し開け、神様のいる部屋に入った。
神殿の扉は重厚なもので、丁寧な彫刻が施されている。
―待っていました、フェーンフィート。…フィーナ、アルミオン、ラフィス…少し見ないうちに、大きくなりましたね―
アルミオンが、ありがとうございますと恭しく頭を下げた。
「それで、神様、ペガサスの子は…?」
早く会いたいと言うように、フェーンフィートはキラキラした顔で尋ねる。
―もう少しです。あと5分ほどで生まれてくるでしょう―
わぁ、と益々顔を輝かせるフェーンフィート。
アルミオンも、「ちょうどいい時に来れたみたいだね」と隣のフィーナに言うが、ふんと返されただけだった。
―その子の名は、“リースナージョペガサス”…―
「リースナージョペガサス…いい名前ね」
フェーンフィートが嬉しそうにその名を繰り返し、微笑んだ。
ボゥッ…
「!!?」
前方にある、4人から少し離れた祭壇が、淡く優しい光を放ち、輝きだした。
(ついに…生まれるのね、リース…)
フェーンフィートは、ごくりと唾を飲み込んだ。
そして…。
スゥ…
輝きがだんだんと消えていき、祭壇の上には一人の少女が横たわっていた。
頭部から生えた一角は眩しいほどに輝いている。
―目を開けなさい、リースナージョペガサス…―
神に言われ、リースがすっと目を開く。
ゆっくりとその開かれた目は、彼女の持つ緩くカールしている髪の毛と同じ、美しいエメラルドグリーンをしていた。
神秘的な森をイメージさせる彼女の雰囲気に、その場にいた全員は声をなくした。
そして、リースはゆっくりと祭壇から降りた。
―リースナージョペガサス、前にいる方々に挨拶をなさい―
神のその言葉に、リースは目の前に立っているフェーンフィート一向へと向いた。
「…私の名は、リースナージョペガサス。よろしく」
リースは無表情でそう言った。
09.02.08 一部修正
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