第二章 花束〜贈り物〜

第二話




「…ふう。全く…。フィーナレンス、どうしてリースに辛く当たるの?」

しばらくして、2人の様子を見かねたフェーンフィートが溜息を吐き静かに言った。

「別に、辛く当たってなどいません」



バンッ!



フィーナの言葉を聞き、リースがテーブルを思い切り叩いて立ち上がった。

だが、それをフェーンフィートが柔らかく制す。

「リース、ごめんなさいね。フィーナレンスは、悪気がある訳じゃないのよ。

…ただ、なんて言うか、感情表現があまり上手くできないだけなのよ。

…だから、許してあげてくれない?」

申し訳なさそうに笑むフェーンフィートを見て、リースはしばらく黙り込みテーブルを見つめる。

「そう…ですか。それなら…いいんです…」

一瞬フェーンフィートと目を合わせ、俯いたリースを見て、フェーンフィートは安堵の溜息を吐いた。

それまで2人をハラハラドキドキで見ていたアルミオンも、顔に安堵の表情が見て取れた。



「…私、もう失礼します。ここにいても、フィーナとまた口げんかしてしまいそうだし…。

フェーンフィートさんやアルミオンに迷惑はかけられませんから…」

リースは立ったままそう言い、くるりと踵を返した。




ガシッ



「えっ!?」

フェーンフィートにより、リースの左腕はがっしりと掴まれていた。

「???」

「フフフ…」

フェーンフィートの顔は、『にっっっこり』と笑んでいた。

リースは何が何やら、どうすればいいのかわからずオロオロしていた。

「今夜はここに泊まって行きなさいな♪まだ住むところ、決まってないんでしょう?」

「!!??」

全てを見透かしたような、どこか恐怖を感じさせる笑顔だった。

そんなフェーンフィートを、「本気か!?」というような目つきで見るフィーナとアルミオン。

「それに、リース。あなたの誕生日会も開いてあげたいの♪」

既にフィーナとアルミオンは諦めていた。



―もう何を言っても無駄だ…―



「え??で、でも…」

リースは、ちらりとフィーナの方を見た。

「…私は構わない。…貴様、もしフェーンフィートさんの誘いを断ってみろ。

馬刺しにして喰ってやる」

リースに有無を言わさず、キッパリと言ってのけた。

「どうする、リース?」

質問されているのに、選択肢はないような気がする…。

「も、もちろん!!ありがとうございます、フェーンフィートさん!それに、フィーナ、アルミオン!」

「私は何もしていない」

「右に同じ」

もう勝手にしてくれと言わんばかりにそっぽを向いたフィーナと、笑顔を浮かべるアルミオン。

それでもリースは、今日ここへ来てから一番の笑顔で言った。

「今夜がとても楽しみ!!」









09.03.18 一部修正


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