第三章 出発〜旅立ち〜

第二話




家に帰ってからも、フィーナは一言も口を利かなかった。

「…フィーナ」

そんなフィーナを見かねたアルミオンは、静かにフィーナの隣に座る。

そして、その隣にリースが腰かけた。

「…フェーンフィートさんがいなくなって辛いのはわかってる。

だけど、フェーンフィートさんの死を無駄にしちゃいけない」

「そのとおりじゃ。いつまたダークヴォルマが復活するかわからぬ。

わらわ達が、フェーンフィートさんの跡を継ぎ、次こそは必ず、あやつを抹殺するのじゃ!」

「………」

フィーナはしばらく黙っていた。

が。

「…わかっている。フェーンフィートさんの死は…無駄にはしない…!」

凛とした表情で、フィーナは言い切った。

そして、固くその胸の内に決意を固めた。









シナセラ歴 3210年


「それでは神様、行ってきます」


―気をつけて、フィーナレンスドラゴン―


「気をつけるんじゃぞ、フィーナ」

「わかっている」

「今度こそは、必ずダークヴォルマを…」

「当たり前だ。もうフェーンフィートさんのような犠牲者は出さない」

リース、アルミオンに見送られ、フィーナはテスタルトへと向かった。

「夢見」の少年、シオン・ガッシュナットのもとへと…。














「リース」

「?なんじゃ?」

花に水をやっていたリースに、アルミオンが背後から声を掛けた。

「…やっぱり、僕、ちょっと行ってくるよ」

「フィーナのところへか?」

「うん。やっぱり心配だ。どんな様子か」

「ほぉ〜〜〜〜?」

リースの顔がにやけた。

「な、なんだよっ!?」

アルミオンは、彼らしくなく声を荒げた。

「やはりアルミオン、お主はフィーナに…惚れておるのか?」

リースが、にっしっしと意地の悪い笑い方をした。

「なっ!?そんなんじゃないってば…!ただ…フィーナだけじゃやっぱり…」

(昔から、フィーナは一人で抱え込む癖があるし…)

「わかっておる、わかっておる!ほれ、さっさと行ってやれ」

そう言い、リースはアルミオンの背中を押してやる。

「う、うん。じゃ、行ってくる」



シュッ



そしてアルミオンは、自らの本当の姿へと変わり空高く消えていった。

「うむ。さすがじゃ、アルミオンファラールドラゴン」

空を見上げ、満足そうに頷く。

リースの視線の先には、白く輝く1匹のドラゴン…。









「う゛〜〜〜〜〜…ヒ・マ・じゃぁ〜〜〜っ!!!」

リースは一人、草の上に倒れ込んだ。

「…こうも一人でおると、暇で仕方ないのぉ…。

アルミオンも、帰ってきたと思ったらすぐに出ていくし…。

…おまけに水晶の魔洞に行くとか言っておったし。

フィーナもまだ旅の途中じゃし…」

ブツブツと文句をたらすリース。

頭の上では、青い空を白い雲がゆっくりと流れている。









09.03.19 一部修正


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