エピローグ 〜転生〜

第二話




シナセラ歴 3213年


ディーゼルがシオンと暮らし始めて、半年ほどが経っていた頃。

ラクシアスランド、神の祭壇で、神は一人祭壇を見つめていた。


―…そろそろ、ですね…―


神はフッと笑みをこぼした。



ボゥッ…



それは何千年も前からある光景…。

新たな生命いのちが誕生する時の、優しい光…。


―目覚めなさい…―


光が徐々に薄れていくと、神はその「光」に優しく声を掛ける。


―リースナージョペガサス…―


自らの名前を呼ばれ、祭壇の上に”生まれた”新たな生命が、羊のような耳をピクッと動かした。



スッ…



新たな生命―リースナージョペガサス―が、祭壇からゆっくりと降り、神の前へ立つ。

「…感謝します、神様…」

リースはニコリと微笑む。

その優しい笑顔は、フェーンフィートを思わせるものがあった。


―リースナージョペガサス、―


「はい」


―祭壇の上をご覧なさい―


「?」

リースが今まで自分の寝ていた祭壇に目をやると、そこには。

「!?…これは…」

リースの目に入ったもの、それはフェーンフィートからの贈り物。

リースが命よりも大切にしていたペンダントだった。


―それはあなたの大切なもの…。さぁ、手に取りなさい。そして、今日からあなたの新たな人生を歩むのです―


「…ありがとうございます、神様…!!!」



チャリ…



リースはそのペンダントをそっと手の中に包み込むと、胸の前でぎゅっと固く握りしめ、目を閉じた。

(フェーンフィートさん…。わらわは、これからも貴女の意思を受け継いでいきます…)




すっとリースは目を開け、神に一礼をした。

そしてゆっくりと踵を返す。



コツ…コツ…コツ…



新たな「希望」へと向かい、一歩ずつ扉に歩み寄っていく。

そして、目の前の扉に手を掛け、力を加える。



ゴ…ゴ…ゴ…



扉の隙間から、細く光が差し込み、リースの体を明るく照らし出す。

そして。



コツ…



彼女は、新たな一歩を前に踏み出した。

「………」

くるりと振り返り、笑顔で神に告げた。

「…フィ…いえ、ディーゼルに、会いに行ってきても良いですか?」


―ええ、もちろん―


「ありがとうございます。:・・いってきます…!」



ゴ…   バタ…ン



扉がゆっくりと閉まり、神の部屋は再び沈黙に包まれた。









09.03.21 一部修正


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