プロローグ〜帰還〜

第二話




「やれやれ…。やっと戦いに集中出来る」

リースはモンスター達と向き合い、ニヤリと笑んだ。

『グオォッ!』

モンスターが一斉に襲いかかってきた。

「フンッ!甘いわ!わらわに向かってくるとは、命知らずなヤツらめ!」

リースはモンスターの攻撃をひらりとかわし、チャクラムを構えた。

「覚悟するがよい。わらわを相手にするなんぞ、千年早いわ!!あの世で後悔するんじゃな!」



ヒュッ!!



リースのチャクラムが空を斬り、目にも止まらぬスピードでモンスターへと飛んでいく。



ザシュッ



『グゥオオゥッ!!』

チャクラムがモンスターの目に直撃し、モンスターの目からはどす黒い血がぼたぼたと落ちた。

そのあまりの激痛に、モンスターは苦痛の声を上げた。





次々とリースのチャクラムはモンスターを倒していった。







「フッ。…やれやれ、じゃな」

リースの前には、大量のモンスターが倒れていた。

もう生きている者はいないだろう。

「…弱いのぉ…。もっと骨のあるやつらかと思っておったのに。つまらんのぉ。

…さて。フィーナ達を追うとするか」

リースがくるりと後を振り向いたその時、



『グゥオォゥッ!!』

「っ!?まだ生きておったのか!!」

最後の一匹であろうモンスターが、力を振り絞り襲いかかってきた。

「ちっ!」

ふいをつかれたリースは、チャクラムを構える暇もなく、モンスターの太く鋭い爪が彼女を襲う。

次の瞬間、その爪は彼女の服を捉えた。

「くっ…」

リースは宙吊り状態になる。

(…油断するとは、わらわもまだまだじゃ…)

だが、リースはキッと眉をつり上げ、腰のチャクラムに手を伸ばした。

が、しかし。



バシッ



それに気付いたモンスターによって、払いのけられた。



カチャンッ…



チャクラムは地面に落下し、小さな金属音をたてた。

(…こやつ…)

リースは油断をしてしまった自分を恨めしく思った。

(…じゃが、わらわは諦めるわけにはいかんのじゃ!!)

意を決し、リースは自らの角をモンスターの右腕に突き刺した。



ドスッ



『グワッ!』

モンスターが思わずリースを放り投げた。



ザザッ…



リースはなんとか受け身を取り着地した。

すぐに、近くに落ちていたチャクラムを手に取り、攻撃態勢へ移る。

『グゥルルルル…』

「!?」

モンスターの様子が、それまでとは明らかに違っていた。

リースもそれにすぐに気付いた。

が、次の瞬間!



ゴウッ…!!!



「!?なんじゃと!?」

モンスターが、口から真っ赤な炎を吹いたのだ。

(…こんなのアリか!?)

リースは、素早くその炎を避ける。

「まだまだ甘いわ!」



ゴウッ



2発目がきた。

だがこれも、リースはひらりと避ける。

だが、リースの避けた先には…、

「!?パスイソン!?なぜこんなところに!?」



パスイソン:水素に似た気体を持つ



そして、

(しまった…!!!!)



ドゴォォンッッ!!!



モンスター達、リースは爆風に巻き込まれた。

「ぐっ!!がっは…!!!」

爆風を受けリースは後方に飛ばされ、その先にあった木に強く背中を叩きつけられた。

「…わらわ…も…ここまで…か」

リースは、死を覚悟した。

「…フッ…」

リースの顔は、優しいものへと変わっていった。

とても、死を目の前にした者の表情ではなかった。

信じがたいことに、リースの表情は幸せに満ちていた。



そして、リースはそれまで首にかけていたペンダントを外し、それを握り締めた。

(フェーンフィートさん…わらわも、そちらへ行く時が来たようじゃ…。

フィーナ…楽しかったぞ…。わらわは、お主に会えて本当に良かった…。

フィーナ、お主には大切な仲間がおる。シオンはお主を必要としておる。

アルミオンも…な。

そして、フィーナ、お主もシオンを必要としておる。

…自分では気付いておらぬようだが…の…)



リースの頬を、血に混じって涙が幾筋も流れた。

その涙と血は、ポタポタと地面に模様を作ってシミになり、吸い込まれていく。

「フッ…」

リースは、もう一度微笑んだ。



ズズ…ズ…



木に背を預け、リースは地面へと腰を着いていった。

力なく座り込み、ゆっくりと静かに目を閉じた。

リースのその顔は、今までに一番美しい顔だった。









(さらばじゃ…わらわの良き友よ…)



カツン…



リースの右手から、ペンダントが滑り落ちた。

そして辺りは、静寂へと変わっていった…。









09.02.08 一部修正


[NEXT]
[BACK]